時間短縮は、入口にすぎない
弊社では、議事録の作成時間が30分から3分になりました。
この数値は議事録の作成に限った実測値です。他の業務の所要時間には当てはまりません。
数字としては分かりやすいのですが、27分が浮いたことより大きい変化があります。議事録が「省略されないもの」に変わることです。
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公開日 2026年9月9日 / 著者 松浦 誠治
議事録の自動化は、AI導入の入口としてよく選ばれます。やり直しがきき、頻度が高く、成果が目に見えるためです。
ただし「作成時間が減ります」だけで導入すると、期待とずれます。実際に効くのは別のところです。
弊社では、議事録の作成時間が30分から3分になりました。
この数値は議事録の作成に限った実測値です。他の業務の所要時間には当てはまりません。
数字としては分かりやすいのですが、27分が浮いたことより大きい変化があります。議事録が「省略されないもの」に変わることです。
議事録が負担な会社では、たいてい次のことが起きています。
| 後回し | 会議直後は忙しく、書くのは翌日以降。記憶が薄れてから書く |
|---|---|
| 書式のばらつき | 書く人によって粒度が変わる。読み返しても要点が拾えない |
| そもそも作らない | 短い打ち合わせは省略される。決まったことが誰の記憶にも残らない |
3番目が最も損害が大きい変化です。決まったはずのことが、1か月後に「そんな話でしたか」となります。
自動化すると、書く負担が消えるので3番目がなくなります。短い打ち合わせでも記録が残ります。
人が書く議事録は、話の流れをなぞりがちです。読み返しても「で、誰が何をいつまでに」が分かりません。
自動化するときは、要約とは別に担当・期限・決定事項の3つを固定の項目として抜き出す形にします。項目が固定されるので、書く人によるばらつきがなくなります。
会議の質そのものも変わります。抽出結果に担当が入らない議題は、実は何も決まっていない議題です。それが毎回見えるようになります。
議事録の工程で、やり直せないのは1つだけです。参加者への配布です。
文字起こし、要約、担当と期限の抽出。ここまでは何度でもやり直せます。誤りがあっても直せばよいだけです。
しかし一度配布すると取り消せません。誤った決定事項が配られると、その後の判断が全部ずれます。
したがって、配布の直前に人を置きます。それ以外は都度の確認を求めません。この線の引き方は「AIにどこまで任せるか」の線引きに書きました。
| 1 | 録音を取り逃さない運用にする。ここが崩れると後工程が全部止まる |
|---|---|
| 2 | 文字起こしと要約を自動化する。この時点では人が読んで直す |
| 3 | 担当・期限・決定事項の抽出を足す。項目を固定する |
| 4 | 直す回数が減ったら、配布の直前まで自動で進める |
2から4へ一気に進めないことです。何回直したかが、任せてよいかの判断材料になります。直しがゼロに近づいてから範囲を広げます。
議事録を自動化しても変化がない会社もあります。その場合、原因は議事録ではありません。
決まったことが実行されない、担当が動かない、期限が守られない。これは記録の問題ではなく、権限と責任の設計の問題です。議事録を整えても解決しません。
その状態であれば、先に手をつけるべき場所が別にあります。
「AIにどこまで任せるか」の線引きをどう作るか:配布の手前に人を置く理由。
AIを入れる前に、業務の棚卸しをどうやるか:どこから着手するかの決め方。
成果物サンプル:実際の議事録の形をご覧いただけます。
執筆:松浦 誠治(5Elements of Nature合同会社 代表/広島県福山市)。人事・労務の実務約20年。管理部門の新設を2社で担当。経歴の詳細